電子機器進化を支えるプリント基板の技術革新と多様な展開

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電子回路の製作やデバイス開発の現場において、回路の複雑化が進むとともに、その安定稼働や大量生産を可能にする土台となる部品の重要性が高まっている。小型化・高機能化を推し進める現代の電子機器開発に不可欠なものが、板状の絶縁体に金属配線を印刷して作られる基板である。この基板の存在があってこそ、数多くの部品を安定した状態で狭いスペースに配置し、機械装置は正確に設計通りの動作を実現することができる。そのため、現代のあらゆる電子機器の心臓部として導入が進んでおり、さまざまな電子回路の集積や信号伝達、電源分配など根幹的な役割を果たしている。量産性や実装精度の向上を目指し、この基板製造の技術も発展を見せてきた。

往時は手作業中心のハンダ付けだったが、現在の方式では、大半の工程を自動設備が受け持ち、短期間で同一品質の基板を大量供給できる体制が整っている。特定の素材を基礎に用い、設計図どおりに金属の薄膜をパターン状にエッチングで加工、必要な箇所で多層化を行い、信号や電源ラインの信頼性を確保する。設計段階から、動作時の発熱や電磁障害に配慮し、基板レイアウトが熟考されるのも当然である。電子回路を載せるという役割は共通しているものの、その用途や機能に応じて異なる要素が要求される。たとえば、高速信号を取り扱う通信・情報機器に求められる基板では伝送損失の低減やインピーダンス整合が、太陽光発電や車載装置向けの場合は耐熱性や高強度などが重視される。

こうした特殊用途向けの開発でも、多層配線や銅張りを工夫し、外部からのストレスに強く、しかも長期間安定して動作するよう設計・製造されている。最終生成品の良否を大きく左右するため、メーカーが特に注力している工程のひとつが基板検査である。微小な導通不良やパターン欠損、異物混入といった微細な欠陥でも通電に支障をきたすため、外観検査だけでなく電気検査やX線透視など最新の手法を導入し、ひとつひとつチェックが行き届いている。加えて、設計段階における三次元シミュレーションや熱解析など最先端の数値解析技術の進歩が、回路生成時点でのトラブル未然防止や信頼性向上につながっている。設計者が描いた電子回路のパターンを実際に形にするため、多くの場合専用のソフトウェアや設計規格が用いられる。

コンピュータ支援設計ソフトを利用することで、部品配置や配線の引き回し、レイヤーの重なり具合、さらには高周波ノイズ対策まで詳細に計算された設計図が自動生成される。設計手法の高度化やソフトウェア環境の発展によって、従来自力では困難だった極めて細かいパターンや複雑な多層構造も効率よくレイアウトできる状況が整った。また、基板の役割は電子回路単体だけにとどまらない。しなやかに曲げたり、異なる素材との複合体として成形したりと、高度な加工品としての展開も活発である。凹凸のある筐体や特殊な形状が必要な電子機器では、硬質基板だけでなくフレキシブルな素材や両者を組み合わせた製品が重用されている。

こうした加工技術の多様化や新素材の導入によって、以前では考えられなかった設計自由度と小型化が実現しているのである。世界各地には多種多様な基板メーカーが存在し、各メーカーはそれぞれ得意とする材料や製造手法を駆使して独自性の高い製品開発に注力している。携帯端末や家庭用電化製品、医用分析装置から産業用制御ボードに至るまで、その供給範囲は極めて幅広い。大量生産を目的とした低コスト重視の基板から、信頼性や性能を極限まで追及したハイグレード品まで、そのニーズは利用現場や求められる品質、コストバランスによって大きく異なっている。国内外のメーカーが生き残りのために切磋琢磨するなか、環境対応型の材料開発も活発である。

有害物質の排除や回路終端の鉛フリー化といった環境規制への適応をはじめ、リサイクル性や分解・剥離の容易な設計も進んでいる。社会課題への対応力がサステナブルな産業運営に繋がるため、より優れた技術力と管理体制の構築が重要な課題になっている。さらに、今後はモノのインターネット、自動運転、スマート工場など新領域に対応するための、より一層高度な回路密度や機能の実現が求められる。回路設計と基板製造の双方が歩調を合わせ、新たな実装材料や微細加工への対応を拡大してゆくことで、新時代の先端機器開発を下支えしていくことだろう。このように、電子回路の発展を担う基幹部品の一つとして多様な分野で利用が拡大し続けるが、安定品質確保や用途拡大には今後も継続した技術革新とメーカーの果敢な挑戦が欠かせないのである。

電子機器の高度化と小型化が進む現代において、基板は電子回路の安定した稼働や大量生産を支える極めて重要な部品である。基板は板状の絶縁体に金属配線を施したもので、部品を狭いスペースに高密度で配置し、電子機器の設計通りの機能を実現するための土台となる。製造技術も進化し、自動化や多層配線、高精度な加工により、同一品質の基板を大量生産する体制が整っている。用途ごとに要求される性能は多様であり、高速通信機器向けには伝送損失やインピーダンスが、車載や発電用途には耐熱性や強度が求められるなど、それぞれの特性に合わせて設計・製造されている。品質管理も徹底され、微小な欠陥も見逃さぬよう外観・電気・X線検査が導入されており、設計段階では三次元シミュレーションや熱解析により不具合の未然防止が図られている。

近年では、柔軟性を持たせたフレキシブル基板や異素材との複合基板など、加工技術の多様化も進展。さらに環境負荷削減の観点から、鉛フリー化やリサイクル対応などサステナビリティを意識した開発も活発である。IoTや自動運転など先端分野の進展に呼応し、基板の高密度化や機能向上が今後も不可欠となる。安定した品質と多様化するニーズに応えるため、基板技術はこれからも進化と挑戦を続けていく必要がある。

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